シカゴのオフィス街に朝が訪れていた。眩しい陽光、ビルの谷間に響く鳥のさえずり、街路樹の葉が擦れあう音、埃っぽい道を駆け抜ける自動車の轟音。
〈風の街〉シカゴは、アメリカの参戦によって、激動する時代の渦に否応なしに引きずり込まれ、不安や恐怖など様々な混乱を社会に抱き込んだが、それでもいつもの通りに夜は明け、清々しい朝を迎えていた。
しかし、ここアードレー家の本社ビル最上階は、ひとりの男の来訪によって、かつてないほどの激震が走る『朝』となる。
昨日。
あれから、アーチーたちはシカゴに戻るとパティにも声をかけ3人でキャンディの立ち寄りそうなところをしらみ潰しに捜したのだが、どこにも見つけることはできなかったのだ。
キャンディが手掛けているスイーツ『カヘタ』を取り扱っているデパートにも、病院や赤十字関係、看護師の知り合いなど、どこにも彼女の訪れた気配はなかった。
『どこへ行ったんだ、キャンディ────。いったいどこで夜を過ごしているんだ?』
いなくなったキャンディを捜すのは何度めだろうか、アーチーはそんなことを考えながらその夜、寝つけないベッドの中にいた。
馬番をしていたキャンディが家出をした時も。
セント・ポール学院からいなくなった時も。
アーチーはそこら中を捜しまわり、疲れ果てて夜空の星々にキャンディの居場所を明るく照らして、目印を与えて欲しいと願ったことを思い出す。
あの時。
キャンディを捜す森の中、崖から落ちてケガをしたアンソニー。キャンディが家出から戻ってきた時のアンソニーの怒りにアーチーは彼の真剣な想いを感じたのだった。
短い手紙を残して、セント・ポール学院からいなくなった時も、キャンディを捜してステアと慣れないロンドンの街を走り回った。
いつもなら、「キャンディ発見器」なんてへっぽこな発明をしそうなステアも、気持ちが沈んで腕が鈍っていると言っていたのをアーチーは寂しく思い出す。
ひとりベッドにいると、キャンディを一緒に捜し回ったアンソニーもステアも、今はもういないという現実がアーチーに迫ってくるのだった。
ふたりの思いを受けとめて、自分がしっかりしなくては。キャンディもアニーも守れるように。
アーチーは改めてそう強く誓うと同時に、『ウィリアム大おじさま』であるアルバートが傍にいて相談できることを神に感謝していた。気のおけない友人であり、大きな兄貴、そして頼れるリーダー。それがアーチーの感じるアルバートだった。
『明日になればアルバートさんがシカゴに戻ってきている。とにかく、アルバートさんに相談しよう。』
次の朝すぐに、アーチーはアードレー家の本社ビルに相談に来たのだった。
そして、アーチーからアルバートへ、昨日の一件が説明されたちょうどその頃。
タイミングよくやってきたのは、着のみ着のまま、作業着姿のレオン・ビアンカリエリ。
はじめは、当主ウィリアムに面会の予約もなくフラリとビルの1階にある受付に現れたレオンに受付嬢が冷たく対応をする。
「お約束のない方とはお会いできません。」
「そうかい?あんた、俺を追い返したら、後で当主にどやされることになるぜ。ご当主さまの大切な養女の件で話があると早く伝えな。」
そんなやりとりの後、ジョルジュがレオンを執務室と同じ階にある来客室のひとつへ通したのだった。
すぐにふたりは来客室に向かい、アルバートがレオンとアーチーを短く紹介した後、低い正方形のコーヒーテーブルを囲んでコの字になって腰をおろした。レオンの正面にはアルバート。
そしてすぐに紅茶が運ばれてくる。
最初はレオンの服装や態度に不満げだったアーチーも、穏やかに紅茶を薦めるアルバートを見習って、表面上は紳士として振るまうことを決めたようだ。
だが、レオンの次の言葉に─────。
アーチーは飲みかけていた紅茶のカップをガシャンとソーサーに荒々しく置いた。飴色の紅茶がソーサーの上にこぼれる。
「なんだって⁉️君がキャンディをイギリス行きの貨物船に乗せたと言うのか?」
来客室にアーチーの鋭い声が響き渡った。
「嘘だろう?嘘に決まっている。そんなことできるわけない。」
アーチーは信じられないものでも見るようにレオンを見た。
「いや、残念ながら本当だ。しかも『強引に本人から頼まれて仕方なく』な。俺の方から客船のチケットを買ってくれとセールス(営業)したわけじゃないぜ。」
わざとからかうようなレオンの口調。
「君も、今、大西洋上にある船がどんなに危険か知ってるだろう。ヨーロッパがどんな状態なのかも。」
アルバートが低く静かに、しかし怒りで燃える瞳でレオンを見据える。
「ああ。そんなこと、このアメリカに住むヤツなら小学生でも知っている。俺に戦争の危険を説くなんて、”釈迦に説法”だな。」
バカにしたように、レオンはフンと鼻を鳴らした。
「だったらなぜ、キャンディの頼みを断らないんだ。こんな時に大西洋を渡る船に乗るなんて危険すぎる。例え彼女がそれを頼もうとも君は断るべきだった。君が船に乗せなければ、キャンディが乗る船はなかったんだ!」
今度はアーチーが拳を握りしめて唸る。紳士としてギリギリ許されるライン。それに対し。
「ふざけんなよ。わざわざ親切に養女の行き先を教えに来てやったのに、なんてぇ言いぐさだ。来るんじゃなかったな。」
レオンがふて腐れた。
「教えてくれたことには礼を言う。だが、キャンディに何かあったら絶対に君を許さないからな。」
戦争の恐ろしさを何もわかっていない人間。いや、金のためなら何でもする人間か。アーチーは、レオンのことをそんな風に評価していた。
「アーチーさんよ、なんだい、そりゃあ。脅迫のつもりか?だがな、冷静になって考えてみろよ。彼女は俺が乗せなくても、なんとかしてイギリスに向かったと思わねえか?他の港から出ている船を探すなり、誰かの船で密航するなりして。そうだろ?」
海千山千のレオンの鋭い指摘。
密航──────。
“そうだ。確かにキャンディはきっと、どんな手段を使ってもイギリスに向かうに違いない”。
レオンの深い読みに、言い返す言葉が見つからないアルバートとアーチー。
そして。
野生の肉食獣のように鋭い嗅覚を持つレオンはすぐに、目の前にいるアーチーの気持ちにもあっさりと気づく。
“へぇ。そう言うことか。もうひとりの方もバンビーナに気がありそうだな”
レオンが心の中で舌を出す。
「なぁ、だったらむしろ、安心安全、スピードも出る俺の船に乗ってよかったんじゃねえのか?俺の船なら危機管理にも長けているしな。ところで……。」
そこで言葉を切って、レオンは目の前のコーヒーテーブルに置いてある来客用のシガレットケースの中から1本の煙草を手に取り、ライターで火をつけ、フーッと長くゆっくり煙を吐き出した。
煙草の煙が嫌いなアーチーが、大袈裟に顔をしかめる。
「なぁ。あんたら、彼女が必死でイギリスへ渡る理由を知ってるか?」
レオンは皮肉な調子で言って、アーチーではなく、アルバートの瞳の奥を探るように見据えた。ギリギリと杭を打ち込もうとでもするかのように。
レオンは、アルバートが”養女の男”の存在を知っているのか、ひどく興味があった。
「そんなことは、君に関係ない。」
アルバートがピシャリと答えるがレオンはからかうように言う。
「あんたの大切な養女は命がけで、恋する男を追っていったんだぜ。その男は爆破されたシーナ・センチュリオン号に乗っていたと言ってたな。」
レオンの黒曜石の瞳がアルバートとアーチーの心の中をかき回そうでもするようにスルリと忍び込む。
「・・・・・・・。」
「へぇ。その様子じゃ、彼女に好きな男がいることをふたりとも知っていたんだな。」
アルバートとアーチーの無言が何よりの答えだった。
「だったら、よかったじゃねえか。どうせその男はもうこの世にはいねえだろうし、恋しい男を追って死ねたならそれはそれであんたの養女も本望じゃねえか?それとも。」
レオンが持っていた煙草を灰皿に押し付けて火を消した。最後の煙が白い生き物のようにフワリと宙を舞う。
「やっと口説き落として養女にした女を他の男に取られて悔しいか?だけど、俺に言わせりゃあ、養女なんてまどろっこしいことをせずに、嫁さんにすりゃあよかっ・・・・」
レオンの言葉に、アーチーが何をふざけた事を言ってるんだと言い返そうとした時。
ガシャーン。
テーブルの上にあったカップ&ソーサーが床に飛び散るのと同時に、隣に座っていたアルバートが立ち上がって、低いコーヒーテーブル越しにレオンに飛びかかるのが、アーチーにはスローモーションのように見えた。刹那。アルバートの右の拳がレオンのあごに炸裂する。
ガキッ。
鈍い音がして、レオンの口許から血がしたたり落ちた。
「ってえ。何しやがるんだ!」
「何も知らないくせに自分の価値観を人に押し付けるな!彼女に……キャンディに何かあったら承知しない。」
「アルバートさん……?」
アーチーは目の前の光景に息を飲んだ。理解が追いつかなくて呆然とする。
「くそっ。やりやがったな。」
レオンが血の混じったつばをペッと吐き、今度は目にも止まらぬ早さでアルバートのみぞおちに重いパンチを入れた。
「うっ。」
たまらずアルバートが床にかがみこむ。
「・・・上品なご当主さまにしちゃあ、いいパンチだが、俺に挑むのは千年早いな。」
ニヤリと笑ってレオンが立ち上がるのと同時に、物音に気づいたジョルジュがノックの音とともに部屋に飛び込んできた。
「ウィリアムさま。いかがなさいましたか?」
かがみこんだままのアルバートは、ドアの前に立つジョルジュに手を上げて制した。
「ああ、ジョルジュ、なんでもない。紅茶が床に落ちただけだ。ビアンカリエリ氏がお帰りになる。案内を。」
まだ苦しげに顔を歪ませながらアルバートが答えるとおおかたの予想はついたのだろうがジョルジュは顔色も変えずに頷いた。
アーチーは目の前の光景を信じられない気持ちで唖然と見つめていた。
いつも穏やかで冷静なアルバートの激しい一面。事がことだけに腹が立つのはわかるが、殴り付けるとは。
やはり、アードレー家の激しい血がアルバートさんにも流れているということか?
いや_____。
それほどの想いを秘めているということなのか?
アーチーは初めて、アルバートをひとりの男として見たような気がした。
スザナがテリュースの乗っていたシーナ・センチュリオン号撃沈の第一報を受け取ったのは、ストラスフォード劇団より先に、軍からだった。
その知らせを受けた時、スザナは最初息ができなかった。
本日未明、サウザンプトン港沖8マイルの海上で、シーナ・センチュリオン号がUボートの攻撃を受け、数分後には撃沈し、現在、乗員・乗客の安否は不明。乗客は寝静まっていたはずの時間の船への爆撃。大変厳しい状況ですとその軍関係者は気の毒そうに言っていた。
テリィが行方不明?
朝の窓辺でカーテンを開き、「姫、朝だよ」と少しぎこちない微笑みを浮かべるテリィ。
しかし、満場の舞台の上では微笑みも、笑いや怒り、悲しみまでも意のままに操り、オーラを放ち輝く姿。
スザナ、と呼びかけてくれるあのバリトンをもう二度と聞けないの?
嫌よ。そんなこと、信じない。
すぐにスザナは母親を伴ってストラスフォード劇団に行き、他に情報が入っていないか尋ねたのだが、やはりスザナが知り得た情報以上のことはわからなかった。
そこで。
眠れぬ一夜を過ごしたスザナだったが、新たな情報が入っているかもしれないと、また次の日、母親に付き添われてもう1度ストラスフォード劇団にやってきたのだった。
ストラスフォード劇団のロバート団長は、アメリカ合衆国の議員や軍幹部とも交流がある。別のルートで情報が入っているかもしれないとスザナは考えたのだった。
あいにく団長のロバートは不在であったが、共同経営者であるニック・ホジキンが対応してくれ、色々と親切な言葉をかけてくれたのだが、それでもスザナが知っていること以上のことはわからなかった。
「また何か情報が入りましたら、すぐにご連絡いたしますよ。」
ニックはそうは言ってくれたものの、彼のデスクの上には『アメリカ戦時下のストラスフォード劇団、3つの劇場での演目について』という会議資料が置いてあった。
こんな時でもストラスフォード劇団は動きを止めず、運営に力を注ぐ。
ストラスフォード劇団は、テリュース・グレアムの安否を心配しながらもロングランを続ける「マイガール」のダブルキャストのひとり、テリュース・グレアムの後任を至急決定しなければならなかった。
アメリカが参戦すれば、ブロードウェイはどうなるんだ?政府によって娯楽や演劇は封じ込められるのか?
興行ができなくなるのではとストラスフォード劇団のメンバーはみな幹部から団員に至るまで不安を隠せなかった。演目も反感を買わないように、こんな時代でも足を運びたくなるような物を選ばなければならないと幹部たちは話し合いを重ねていた。
「団員がひとりくらいいなくなっても劇団は公演を優先するのね」
スザナは、寂しくそう思った。
あの時も。
主演女優である自分がケガで舞台に立てないとわかると、すぐに劇団は代役だったカレン・クライスをジュリエット役に立て、何事もなかったかのように稽古を再開した。今回もすでにテリュース不在のまま話は進んでいるのだろう。
団員ひとりひとりの思いより、興行が優先される現実。それがショービジネスの世界だった。
それでも。
ひとりくらい私と同じように悲しんでくれる誰か欲しい。
誰もテリィが居なくなったことを悲しんではくれないの?
スザナは誰かとテリィの身を案じたかった。一緒に彼の無事を祈りたかった。そして、その想いを口にして共有したかった。
ここにいても仕方ないわ。
スザナが母親の待つロビーへ戻ろうと車椅子を反転させた時。
廊下の向こうから見覚えのある女性がやってくるのが見えた。夜の色の髪、ソバカスの浮かぶ顔に優しげな瞳。
脚本家のスカーレット・メイ。ううん、ソフィア・グリフィスだわ。
スザナはとっさにソフィアに向かって声をかけた。
「こんにちは。ソフィアさん。」
ソフィアがスザナに気づき、会釈をする。
「スザナさん……。」
婚約パーティーで見た艶やかな姿とは別人のように憔悴した様子のスザナ。車椅子の手すりにかける痩せた手が痛々しかった。
「退院されたと聞きました。お体はいかがですか?」
若いソフィアにはこんな時、テリュースの恋人であるスザナになんと声をかけるべきか、なんと言えば彼女の心に寄り添えるのかわからなかった。
「もうずいぶんよくなって今は自宅で過ごしているの。テリィのことで新しい情報が届いていないか、尋ねに来たのよ。ストラスフォード劇団なら情報が入りやすいんじゃないかと思って。」
スザナはソフィアを見上げてせいいっぱい微笑んだ。
「みんなテリュースさんのことを心配しているんです。何かわかりましたか?」
「いいえ。残念ながらまだ何も。サウザンプトンの混乱が酷くて現場の様子がまったくわからないそうなの。軍関係者も把握しきれてないそうよ。」
「そうなんですか……。早く詳しいことがわかるといいのですが……、もう少し時間がかかるかもしれませんね。」
ソフィアが薄く微笑むが、その目が腫れぼったい原因は、自分と同じだろうと思うとスザナは彼女をとても近く感じた。きっと、ソフィアは自分と同じ気持ちを抱いてくれているに違いない、テリュースを案じて眠れぬ夜を過ごしたのだろうと。
「そうだわ、ソフィアさん。」
スザナはふと思い出した。
「ザ・プレイマガジンのインタビュー記事を拝見しましたわ。」
ザ・プレイマガジン先月号は、スカーレット・メイことソフィア・グリフィスの単独インタビューが数ページにわたって掲載されていた。
ストラスフォード劇団の主演女優であり、売れっ子脚本家の仲間入りを果たしたソフィアは、今や芝居好きの若い女性から憧れられる存在だった。
「ありがとうございます。なんだか、心の中まで丸裸にされたような記事でお恥ずかしいです。」
「そんなことなくてよ。とっても素敵な記事だったわ。特にスカーレット・メイ先生は”ハッピーエンドの脚本しか書かないと決めている”ってところが、なぜだかすごく嬉しかったの。」
「スザナさんにそう言っていただけるなんて光栄です…………。あ、そう言えば、テリュースさんもイギリスへ出発前に、あのインタビュー記事を読んだと言って下さったんです。」
ソフィアは、はにかんだように瞬きをする。
「それで”なぜハッピーエンドの脚本しか書かないと決めているのか”と尋ねられたんです。」
「彼がそんな質問を?」
「はい。それで私は、理由はふたつあって、ひとつは、”お芝居を観た後、観客のみなさんに幸せな気持ちで劇場を後にして欲しいから”とお話しました。そして、もうひとつの理由はブライアンさんに笑われてしまったので恥ずかしくてお答えできません、ってお伝えしたら。」
スザナはそれで?と言うように首をかしげて次の言葉を待つ。
「そうしたら、テリュースさんがいつものようにそっけない感じで……、あっ、ごめんなさい。つい。」
「ふふふっ。そうよね。彼いつもそっけない言い方をするわよね。」
スザナがふんわりと微笑むとソフィアはそのまま言葉を続けた。
「テリュースさんは、決して笑ったりしないから教えてくれないかとおっしゃって…………。だから、私、笑われるかもしれないけど、少女の頃から”命をかけた恋”に憧れているんだと正直にお話したんです。」
ソフィアはブライアンに、そんな幻想を抱いているなんてまだまだ青いなと言われ、またテリュースにもそんなことを言われるのではと思いながら、おずおずと自分の想いを告げたのだった。
そして、ソフィアは、『命をかけるほどの恋ならば、最後は必ず叶って欲しい』と願っていることも。
「現実にはそれはなかなかありえないことも私だってわかっています。でも、だからこそせめて私の脚本の中には、命をかけた恋が存在して欲しいと願っているんです。そしてその恋は、最後には必ず叶うんだと思いたくて、結末はハッピーエンドと決めていますとお話しました。」
「私も心から賛成だわ。それで……、そのお話を聞いてテリィは何て?」
「”命をかけた恋”か……。幻想なんかじゃあないと呟かれて。」
スザナは急に自分の胸がドキドキしてくるのがわかった。スザナの知らない秘密のテリィがそこにいるような気がして。
「テリィは命をかけた恋は本当にあるんだと言ったのね?」
「はい。テリュースさんは、私に話しかけるというより独り言のように、俺は命をかけて愛してくれる女性に会ったのだから幸せ者だなとおっしゃっていました。」
「……命をかけて愛してくれる女性?」
「ええ。私は、テリュースさんはスザナさんのことをおっしゃっているんだと思いましたけど。」
「テリィがそんなことを…………。」
スザナは嬉しくて胸が締め付けられるような気がした。
スザナは、これまでテリュースが自分のことを誰かに話してくれているとは思っていなかった。
それに、命をかけて愛しているとわかってくれているのだ!
スザナはソフィアの言葉に心の震えが止まらなかった。
ずっと自分の愛はテリィにとっては『”負担”』でしかないと思っていたのだから。
でも、そうではなかったと思っていいの?テリィ。
私の愛はあなたにとって幸せだと言ってくれるの?
スザナはソフィアの手をとった。
「お話を聞かせて下さってありがとう、ソフィアさん。何があってもくじけずに彼を待てそうですわ。」
スザナはそこがまるで舞台の上であるかのように艶然と微笑んだ。
『神様。どうか彼を、テリィの命をお救いください。再び彼に会えるのなら、他には何も望みません。どうかテリィとまた会えますように____。』
スザナは胸の十字架を強く握りしめた。
次のお話は
↓
永遠のジュリエットvol.26〈キャンディキャンディ二次小説〉シーナ・センチュリオン号は、1発目の魚雷が直撃してからたった20分で沈没したらしいと、貨物船ローグ号の船長グインがキャンディに教えてくれ...
いつも拙い私の物語を読んで下さってありがとうございます。ブログの向こう側にいらっしゃるみなさまをいつも近く感じております💕Google検索からダイレクトに訪れて下さる方々もいらして感激しています。
“妄想”が大好きな私は、「名前」や「固有名詞」にも”妄想”や”イメージ”を持ったりします。
ですので、『永遠のジュリエット』を紡ぐ際に、”私だけの趣味”を発動しているんです💕お気づきでしたか?
アーチーの愛車やテリィの弟の名前など登場人物の名前、Uボートに撃沈された船の名前、場所の名前など、実はわりと時間をかけて調べたり、考えたりしているんです💦さらっと書けば誰も気づかないところなのですが、こだわっていたりします(笑)
例えば。
テリィが乗っていてUボートに撃沈された「シーナ・センチュリオン号」にはモデルがあります。
それは、「ルシタニア号」
この客船はやはりUボートに爆撃され沈没していますが、その名前はローマ帝国の属州からきています。そこで、私は、同じテイストを感じるようにと、ローマ帝国の「百人隊長」という意味の「センチュリオン」を使いました。アメックスのセンチュリオン・カードのイメージ、高級なイメージにも繋がりますよね💕
また。
アーチーの愛車にもモデルがあって、当時高級車として名前を馳せていたデューセンバーグという車があります。いくつかモデルがあるそうですが、私はガンダムZ風に🤣「デューセンバーグ・モデルZ」をアーチーのカスタムカーといたしました💕
それに。
テリィがスザナの為に買った隠れ家のある村「フートンチェイス村」は、(イギリスにですが)、実在する街(村)です。今はだいぶ変わってしまったようですが、イギリスの典型的な素敵な田舎です。そこをイメージして、テリィたちの隠れ家のある風景を頭の中で妄想しています。
なおオリジナル人物の名前については。
まず、短くて覚えやすいことを優先しています。
そして、書いていて自分でも”笑った”のが、テリィの弟を「レイモンド」にしたことです🤣
だって、お父様は、リチャード・D・グランチェスター。
お兄様は、「テリュース・G・グランチェスター」なんです‼️
あ~💕なんて流麗なお名前✨✨
なのに、弟はいくら見た目が「✕✕✕✕(笑)」でもまさか、
「ジム・K・グランチェスター🤣」とか「サム・M・グランチェスター🤣」では、手抜き感が半端ないし、グランチェスター公爵夫人がそんなの許すわけがない(笑)*サムやジムが悪いわけではありません💦
そこで。
見た目のイメージをふっ飛ばして🤣
お兄様の名前に負けない「高貴なイメージ?」の「レイモンド」にしたんです💕
「賢明な守護者」という意味を持つレイモンド。
DNA的にはテリィと近い弟ですから、ふとした瞬間に、テリィの面影があるかも~🤣なんて思ったりもします💕
あくびした時の鼻筋、とかジュースを飲む時の喉仏とか、髪をかき上げる指の形とか(笑)小さすぎますか?共通点(笑)
いえいえ、よ~く見れば、眉や鋭い目元、育ちの良いオーラは似ているかも🎵
↓
それがレイモンド・R・グランチェスターさま✨です。
それから。
テリィとスザナの婚約パーティーが行われたホテルの名前は「ホテル・ヴァルハラ」としましたが、このホテルはNYに実在しません。このホテルも私の妄想の中にあるNYのホテルなんです💕
「ヴァルハラ」は、北欧神話の主神オーディンの宮殿の名前からとりました💕
荘厳で豪華な神々の宮殿のような高級ホテルを選ぶスザナ。彼女は常に華やかできらびやかな雰囲気を愛する女性。そんな妄想です。
こんな風に、「名前」に自分の好みを閉じ込めたり、広げたりがとても楽しいです💕
こんなストーリーもありかなと思って読んでいただけたら嬉しいです💕 ジゼル
にほんブログ村
この記事のURLをコピーする
ABOUT ME